診察日ではなかったのだけれども、どうも不安が強く、涙も止まらないので久しぶりに手紙を携えて受診。日赤でもらった薬の薬情と、手紙を出して見ていただく。
気管支喘息になったのでしたね」と薬情を見ながらカルテに書きうつして行かれる。その後、ゆっくりと手紙を読んでくださる。辛さと不安と、悲しさでいっぱいになり、こらえても涙がこぼれていく。
最後まで読んでいただいたあとはため息をつくように
「病気になったりすると、それに関連して過去のことを思い出してしまうんですなぁ」
「これを乗り越えていくのはとても辛くてきついでしょうね」ともおっしゃっていた。
「親の立場からしたらこんなに悩んでいるとは思っていないでしょうね。その証拠に、今は立場が逆転していてすっかり頼りにされているでしょう」
そんな風に言われて、思わず言葉が出た。
「確かに私は自分が親に迷惑をかける存在だと思ってきました。だけど、親は充分元を取り返すぐらい、私にも迷惑をかけてきたんです」と。
主治医は少し興味を持ったのか「例えばどんなことで?」と聞き返してこられたので
「先生に以前お話ししたことがあったかどうかわかりませんが」と前置きした上で、
高校の修学旅行の帰り、同じ新幹線に母親が乗り合わせてきたこと、東京駅まで行けば必ず一緒に帰れるのに、車内中を「うちの娘はいませんか?」と探し歩き、姫路あたりで見つけられ、顔から火が出るほど恥ずかしかったことを話した。まずあり得ない話に、主治医はなぜそんなことになったのか、状況をたずねられ
「それは嫌だったでしょうなぁ。あなたの気持ちはよくわかりますよ」
と言ってくださった。この日は涙を止めることができず、診察室を出てからも涙があふれた。泣きながら支払いを終えて、処方箋と領収書を受け取り、涙声でお礼を言ってエレベーターの中でようやく冷静を取り戻しつつあった。


薬局には行ったものの、結構混み合っていたことと塾のお迎えの時間が迫っていたので、処方箋を預けて帰った。